先日、労働基準監督署の調査に立ち会ってきましたのでその時の話。
今回対象となったのは医療機関でした。
労働者にとっては天国のような働く場なのですが、いろいろとご指摘をいただきました。
その中から一部をご紹介します。
(1)時間給者への定額の手当
こちらでは、時間給者に対して、よく頑張ってくれているのでと、定額の手当を出されています。それも2万円~3万円程度ですから、時給に換算すると結構な額になります。
しかし、これが、指摘を受けてしまうのです。
指摘内容は、時間外手当の単価計算に算入されていない。
確かに…。
もちろん、労働基準監督官も意地悪で言っているのではありません。
現状で、労働者からの訴えがあれば、追加の支給が必要になると心配して言ってくださっているわけです。
口頭にて、『法定以上の時間外手当として』という説明をしての支給とご説明しましたが、現状の規程では大丈夫とは言いづらいと…。
遡及しての追加支給とならなかったのは、悪意のなさと、実質的に上乗せ支給であることが明白だったからでしょう。
これが賞与時にまとめて払われていたら何の問題もないわけですから、ある意味おかしな法律です。
ちなみにここは、さらに賞与も別であるんですけどね。
今回、きっちりと賃金規程を見直し、労働条件通知書にも記載しておきました。
(2)休憩時間
これは、過去の医療機関の調査でもよく指摘された内容です。
たいていのパート勤務者は、休憩時間を好みません。
なぜなら、その分、拘束時間が長くなるから。
休憩しているくらいなら、早く終わらせて帰りたいからです。
夕飯の支度もあれば、子供も帰ってきますから。
その要望に応えて、休憩は最小限にしてもらって、その休憩時間を申告してもらって時間給によって給与を計算する。
これが、『休憩を取らせていない』との指摘を受けます。
本人の要望なのに…。
確かに労働基準法で、6時間以上の勤務には45分以上、8時間超の勤務には1時間以上 の休憩を取らせるようにとはなっていますが…。
しかも、事業主には、雇用する労働者の労働時間把握義務がありますから、『休憩時間の取得を任せておいて、タイムカードの全ての時間に時間給をお支払いする。』という形態でも、同様の指摘を受けます。
私は、監督署の調査や就業規則作成によって、その組織なりに平和に成立しているルールを変えるのがあまり好きではありません。
ですから、今までと同じまま、何も変わらないが、意味付けを変えるという形での是正を心がけます。
今回も、その線で対応しました。
60分の休憩が必要であることをご説明の上、でも、やり方を変えるつもりはないので、今まで通りの賃金不支給となるしっかりした休憩だけの時間と、トイレやお茶などの賃金不支給とならない細かな休憩時間を加えたものと、2つの時間を申告してもらうことにしました。
この他にもいくつか指摘はありましたが、こんなに問題のない医療機関でも、是正勧告書は書かれてしまいます。
しかもその多くは、労働者の希望に応じたために指摘を受けたに近い内容です。
ただし、労働基準監督官がおっしゃるように、労働者が豹変して訴えを起こしてくれば、労働者の言い分が通ってしまう内容でもあります。
今が平和だからこそ、意味づけの変更がスムーズに行えるのも事実です。
うちはどうかなと思われた院長先生がいらっしゃいましたら、変えるかどうかは別のこと。
まずは、認識することが大事だと思います。
中には、意味づけによって防げるかもしれない、不払いの時間外手当が日々増えている医療機関もあると思われます。
不安な場合は、一度チェックしてもらうのもひとつですよ。
もちろん、私に言ってくださってもチェックさせていただきます。
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