昨日は、医療機関の労働基準監督署調査に立ち会ってきました。
今日は、その流れをご紹介してみます。
(1)概況確認
まずは、診療科目、診療時間、雇用している人数、常勤・パート等の人数を確認されていきます。
先方は医療部隊というわけではありませんので、医療機関に対する知識・認識は、それぞれの調査官の過去の調査経験によるものでしょう。
ここで労働者名簿との確認がなされます。
なお、ここで、人数確認がなされるので、就業規則の提出義務や産業医・衛生管理者の選任義務など、人数基準のチェックが暗になされるわけです…。
(2)定期健康診断
昨日の調査は、早く出てきました。
調査対応する側としては、案外軽く見ている内容なのですが、必ずチェックされます。労働基準法上は、1年以内ごとに定期健康診断を、常勤者(フルタイムの3/4以上勤務)全員に受けさせる必要があり、困ったことに、その記録を保存しておかなくてはなりません。
是正対応は、頑張ります的な対応や、就業規則への付記ということになりますが、過去、『全員受けさせました。』という宣言書を出さされたこともあります。
※社長が、『受けさせたくても拒否されるので無理だ!』と抵抗したせいもあるかもしれません…。
(3)労働条件通知書
雇い入れる労働者に対して、事業主は書面にて労働条件を通知しなければなりません。今回も、それはあるかというチェックでした。
労働条件が記載されているので、最低賃金をクリアしているかや労働時間数などもチェックされます。
無い場合は、賃金台帳・タイムカードのチェックの際に行われます。
多くの医療機関で存在しない書類ですが、私個人的には、就業規則よりも大事なものだと思っています。
だって、働くときの条件ははっきりしていないと、後でもめるじゃないですか。スタッフの言いなりで良ければ要らないかもしれませんが、明確に告げておいたほうが先生にとって有利なはずです。
ちなみに、ない場合や、項目が不足している場合は、今後使うひな型を提出させられます。
(4)タイムカード
よいよ、時間外労働のチェックに入ります。
全体をざっと見られて、多く働いていそうな方からチェックしていきます。担当官にもよりますが、2~3人のチェックになることが多いです。
これも担当官によりますが、見事に見抜く担当官もいらっしゃいます。
指摘を受ければ対応しようと思っている方を、多くの場合狙い撃ちされます…。
基本的には1日8時間、1週40時間を超えていないか、超えているなら何時間超えているかをチェックしていきます。
超えている場合は、当然36協定の提出の有無が確認されます。
労働時間管理をしていないケースでは、結構しっかり注意されます。当然、今後の労働時間管理方法を是正報告で示す必要があります。
(5)賃金台帳
時間外労働の時間数が出てきたので、今度はそれを払えているかのチェックです。
時間数は正しいか、単価計算は正しいか、怪しそうなところは徹底的に計算されます。
ただし、管轄が違うので、社保加入がどうだとか、雇用保険加入がどうだとかは言われません。
当然、払えていなければ、チェック対象は広がることになります。
遡って数ヶ月、同条件の労働者数名という形で広がります。
是正は支払ったことの証明を提出することになります。
(6)是正勧告書
改善が必要な事項について、説明をしてくれます。
だいたい1ヶ月~2ヶ月の猶予期間があり、その間に対応して、是正報告書で報告します。
昨日の調査は、一応是正勧告書はいただきましたが、想定内のものでした。
そもそも、3年ほど前に私が関わっているので何か出てくるはずもないのですが(ただし、やり方は変えさせてないですよ…。)、全く専門家が関わったことのない医療機関に調査が入れば、何が正しいのかわからなくなるようなカルチャーショックを受けるはずです。
何しろ、昭和20年代の工場労働者をイメージして出来た法律ですから…。
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