時間外労働・残業を自己申告の申請制度にしている事業所がよく見られます。
時間外労働・残業をする場合に、上司に申請をして、認められたら時間外手当・残業代が支払われるという形です。
経営者としては、上司の抑制や手続きの面倒さ、労働かどうか微妙な時間の不申請、時間外手当支給請求書的な書類への抵抗感などから、実態よりも時間外労働を抑えることができるため、多く採用されています。
また、『法律を破るつもりはないから請求されればちゃんと払うが、こちらから進んで払う必要はない。』というようなスタンスの経営者には、まさしくという制度であります。
ただ、本当に法律を破っていないのでしょうか?
今日はこのあたりのお話です。
“事業主には労働者の労働時間数を把握する義務がある。”
これが、平成13年4月6日に出された厚生労働省の通達で明確化されたものです。
これにより、自己申告自体が否定されたと言っても良いでしょう。
自己申告は労働者に労働時間管理を投げてしまう制度です。
しかし、労働時間数の把握のために自己申告させているという主張が当たり前に返ってきますので、厚生労働省も自己申告を原則から外しただけで、条件付きの例外として認めています。
その条件が『適正な自己申告が行われるような環境づくり』です。
具体的には下記の文章になります。
-通達より抜粋-
自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと
自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること
労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定するなどの措置を講じないこと
時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないか確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること
-以上-
ひらたく言えば、時間外手当・残業代の抑制にならないならオッケーという話です。
そうなれば、結局手間だけかかって、抑制にならないという経営者にとって何の利点もない制度になってしまいます。
もちろん、社内にはいるが、労働でない時間が多数あって、それを上記のような徹底の上の申請制度で省くというような形で使うことはできるでしょうが、いずれにしても、現状の運用で問題が生じないというわけにはいかないでしょう。
手間と法令遵守と時間外手当・残業代の抑制。
バランスを取ることが難しい問題です。
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