【質問】
人事異動は自由にやっても良いのでしょうか?
【回答】
基本的には問題ありません。
が、注意すべきことはいくつもあります。
【解説】
そもそも、人事異動ができる雇用契約なのかを確認する必要があります。
職種・勤務地等、それらが限定された雇用契約である場合、その限定を超えて人事異動することは問題があるでしょう。
では、単純に、限定しないで雇用契約を結んでいれば良いのかと言えば、それも問題です。なんらかの事情により、その職種・勤務地での勤務が不要となった場合には、限定があれば、その解雇に正当性が認められやすくなりますが、限定がなければ、職種転換・勤務地変更などして雇用契約を維持する努力義務の度合いが強くなります。
つまり、限定がなければ、労働者と組織の結びつきが強い関係になるわけです。
当然、結びつきが強ければ、人事異動を行うことは問題になりません。
逆に、限定要素が入れば入るほど、人事異動を行うことに本人の同意が必要になってきます。
また、人事異動の人選もその正当性を判断する際に重要になってきます。特定の誰かを『別のなんらかの理由』で選んだと判断されれば、違法性は高まります。
さらに、異動後の取り扱いも大切で、例えば事務職から営業職への職種変更を行った直後から結果を求めて、かつ評価・査定等により減給するといった状況では、とても正当とは言えません。
また過去の実績も重要です。
過去にも同様の職種変更や勤務地変更が頻繁に行われている場合と、初めての場合では、労働者が予見できるかという意味でも大きな違いがあります。
『別のなんらかの理由』が存在する可能性も当然高くなると見られてしまうわけです。
つまりは、目的が合理的かつ正当であって、人事異動の可能性もある程度予見でき、異動後の労働者の不利益をケアするのであれば、常識の範囲で自由に行うことができますが、そうでなければ、本人の自由意思に基づく同意が必要ということになるでしょう。
明確に法律によって定義されているわけではなく、シロ・クロを明確に切り分けられるものではありません。判例からの傾向というニュアンスでご理解いただければと思います。
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