【質問】
雇用契約期間を定めてさえいれば、自由に更新しないことができるんでしょうか?
【回答】
その雇用契約の実態次第、労働者に与える更新期待度によります。
つまり、明確に当初より更新しないことが明らかであれば、更新しないことに何の問題も生じませんが、更新回数が多いとか、同様の労働者が全員更新されているような状況においては、雇用契約期間自体が形骸化しているとみなされ、更新しないことについて、解雇の際と同程度の理由が必要になります。
【解説】
厚生労働省は、『有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準』において、契約締結時の明示事項等として、以下の2つを定めています。
①更新の有無を明確にする。
②更新がある場合、その判断基準を明確にする。
単純に有期労働契約と言いますが、そのパターンはいくつか存在します。
・完全に有期
何かしらの建造物を作る、プロジェクトを実行するなど、業務が行われる期間自体が有期であり、業務終了により、労働契約も終了するもの。
・実質無期
景気や業績の変動に対する雇用の調整を目的として、正社員以外の者に対して雇用契約期間を定めているもの。実態として更新が繰り返されている。また正社員との業務の違いもあまり明確ではない。
・一応有期
正社員登用前など、雇用のミスマッチを防ぐべく、試用期間のような役割で位置づけられたもので、雇用契約期間終了時点で、雇用契約期間の定めのない雇用への移行あるいは雇用契約終了となるようなもの。ハローワークのトライアル雇用制度が該当すると言えます。
大事なのは、その有期契約が、どれに該当するのかということが明確に伝えられていることです。
当然、完全有期→一応有期→実質無期の順に労働条件としては安定します。
こうして、どういう種類の有期雇用なのかということが明確に伝わっていれば、自然に、更新に関する制限度合いも自然に決まってきます。
更新しないことについて、完全有期であれば、そもそも、更新を期待すること自体間違っています。
一応有期の場合でも、その後、期間の定めのない雇用契約に移行するかどうかは別として、原則は一旦途切れるわけです。
実質無期のケースなら、有期雇用は形だけであり、契約満了で退社していただくには、解雇と同等まではいかなくとも、相応の理由が必要となるわけです。
ですから、雇用契約期間さえ定めておけばというのは問題があり、その有期雇用契約の実態がどうであるか、そしてそれをどう伝えているのかが、重要になってくるわけです。
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