今、とある病院のスタッフ、とくに看護師さんの賃金データの分析をしています。
今まで金額の記載された賃金規程もなく、その場その場でベストを尽くして賃金決定されてきたのですが、矛盾もたくさん生じていて、まずは一度チェックしたいとのことでのご相談でした。
実際にデータを見てみると、その場その場で一生懸命考えて決定されたのでしょう。
一定レベルのルールというか法則を見受けられました。
データだけを見ていれば、そんなに変な状態にはなっていません。
ただ…。
その賃金傾向と、実際の経営者や人事担当者の方向性が合致しているのかが問題です。
たとえば…。
医療機関の資格職全般に言える特徴ですが、勤続年数の短さがあります。
ニーズの高い資格職だけに、職にあぶれることもありません。
職務内容も、看護師資格が必要な業務に限定されているケースが多いので、転職しても、比較的即戦力で働くことができます。
ですから、転職にリスクがありません。
ゆえに、全般的に勤続年数が短くなります。
ただ、そんな中でも、公的病院での勤務期間は比較的長い傾向にあります。
その違いは…。
賃金制度です。
もちろん、業務の質の部分もあるとは思いますが、公的病院の賃金制度は、公務員的ですから、年功序列がベースになっています。
長期勤続優遇で長くいればいるほど、待遇は良くなります。退職金制度もかなりのものがあります。長くいるほうが得なのですから、長く勤務して当然です。
逆に、一般的な病院や診療所は、流動的な人材を中途採用で確保していく必要もありますから、中途採用の条件を上げる必要があります。
年功序列賃金制度は、通常、当初の条件は低いものになりますから、中途採用において、労働条件を見比べられれば、他に見劣る条件となり不利になるのです。
ですから、払える賃金額は限度がありますから、結果的に、年功序列賃金制度ではない賃金制度になり、長期で在籍することに魅力を感じてもらえないという結果につながるのです。
それでも、長期勤続を願うなら、中途採用市場で不利になったとしても、長期勤続者を優遇する賃金制度にすること、それがわかる賃金制度•規程を作ることになります。
そして、働いている人からの紹介で人材を確保していくことができるようになれば、長期勤続を望んでいるとすれば、最も良い状況が生み出されることになります。
看護師さんの横のつながりってすごいですからね…。
もちろん、長期勤続を望んでいないのなら、その場の賃金を最大限に上げることが最適です。
賃金制度は、労働者に対して、何を求めているかのメッセージです。
どこにでも適応できる最高の賃金制度など存在しません。
その業界、職種、組織、経営者に合った賃金制度を採用することが、経営者として最も納得のいく結果を作り出してくれるのです。
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